蕎麦の盛り方の基本
四つに分けて盛ってから最後に真ん中あたりに五つ目をパラパラッと盛ります。そうすれば、五つに分けて盛っていても、見たところ分けて盛ってあるようには見えず、一体感が出て見目麗しくなります。テレビでは角せいろ(正方形のせいろ)の絵で設問が作られていましたが丸せいろの場合でも同じ盛りかたです。理由はその方が蕎麦を取りやすくて、食べやすいからなんですね。私も駆け出しの頃、店長から「こうやって分けて盛るんだよ」と教わった事を思い出します。でも忙しい店でしたので基本どうりにやっていると注文をこなしきれない訳です。見かねて先輩が「変わろうか」という事になってしまいます。『まだまだだね・・・』と言われているわけでヤッパリそれは悔しい。そこで先輩方を見て見ますと、一番ではなく、四番の素早くさっとひねるようにして盛っているように見える。仕事は見よう見まねで覚えるという世界ですから先輩方の上っ面だけ真似をするということになってしまいがちです。しかし、先輩方の仕事をジックリ見続けますと、彼らの仕事が「基本の崩し」で、尚且つその中にも「基本にのっとった崩し」の人と「基本を無視した崩し」の人とがいる事が分かってきます。基本を忘れない人の仕事は綺麗ですから、綺麗な仕事を見よう見まねで覚えて行けばよいわけです。若い時は目の前の基本の技術しか目に入りませんでした。洗い場から始まった私の修行時代は技術的な事に熱中出来た時期でありました。未熟だからこそほかの事が目に入らなかったのですが、私にとっては幸せな珠玉の時間であったと今は解ります。基本を大切に仕事をして行くと基本の向こうにあるものが見えてくるような気がいたします。大切なものが見えてきますと基本から始まり「基本の崩し」を経た仕事がまた基本に立ち戻ってゆくのではないかという気が、最近はいたしております。
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