冬至の柚子切りのこと

昨年の事で恐縮ですが、冬至になると懐かしく思い出すのが「柚子切り」です。ただ、数日後に大晦日の年越そばが控えているため、いつもアワタダシク通り去ってしまうのが私の冬至の「柚子切り」の思い出でした。そこで、昨年どころか、もう豆まきも終わってしまったのに申し訳ないのですが、一度ちゃんと冬至の柚子切りの記憶をお話しておきたいと思ったのでした。「柚子切り」と申しますのは、更科そばにゆずの皮を揉みこんだ変わりそばのことです。変わりそばは、卵切り、茶そば、桜海老、ごま切り、海老切り、けし切り、草切りなど他にもたくさんありますが、その中でも柚子切りはとても美味しい部類の変わりそばです。私の勤めておりましたそば屋でも冬至になると柚子切りをお出ししておりました。冬至の日だけで、通常の営業とは別に、220~230食の柚子切りを用意して、無くなったらお終いという事にしておりました。分量は柚子切り10人前に対して大き目(とても大きいです)の柚子が6個ですので、用意する柚子の数は130~140個です。柚子は表面の皮だけを使います。裏のワタ毛がつかないように丁寧に表面の皮だけをむきます。この表皮だけになったものに、水を少し加え、ミキサーで充分に擂り潰し、どろどろにします。これを裏漉しにかけると、クリーム状のきれいな柚子の糊がとれます。それを二八の更科粉(更科粉八、小麦粉二)に混ぜて打つわけです。さて更科そばを打つのには「湯ごね」をいたします。つまり更科粉の四分の一の量を熱湯でそばがき(このそばがきを「新粉」といいます)にしてから、残りの粉を合わせて打ってゆきます。一方柚子切りは糊状の柚子の分量が入りますから、新粉の量は更科粉全体の四分の一のそのまた三分の二位にしなければなりません。柚子の糊は新粉を作った後で加えるのですが、その際、柚子の糊を十分に湯煎して温めておくことが大事です。更科そばは温かみのあるうちに打ち終えなければ、足が繋がりにくい(そばが長くならない)からです。

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